クラスで問題行動を起こす子どもの5つの作戦と対処法~その①『褒めるな、キケン』

いわゆる「問題行動」を起こす子どもには、必ず『目的』が存在します。
子どもたちの問題行動の目的や適切な対処法を知っておくと、自分たちにとっても、子どもたちにとっても、クラスや家庭においても素敵な結果をもたらしてくれます。
今回から「問題行動の5つの作戦」を5回にわたり解説していこうと思います。

アルフレッド・アドラー(1870~1937)は精神科医でしたが、とりわけ問題を抱える子どもの教育に熱心な人物でした。

今回からご紹介する「子どもの問題行動5つの作戦」はアドラーが提唱した個人心理学(アドラー心理学)を、より広く一般向けにも応用できるようにと、彼の弟子であるルドルフ・ドライカース(1897~1972)が体系化したものです。アドラー心理学式の教育方法は現代においても画期的で、お子さんを育てている保護者の方や学校の先生など、教育に携わる方ならどなたにでも有益な理論だと思います。
そんな情報が少しでも多くの方に広まっていけば幸いです。

今回は第1回目。
「問題行動の5つの作戦」の1つ目は『賞賛』です。
では詳しく見ていきましょう。

なぜ問題行動を起こすのか


現代のアドラー心理学では、人の持つ根本的な欲求を『所属欲求』と考えています。このお話をすると「いや、「生きたいという欲求」、生存欲求なのではないか」というご意見も頂きますが、もし生存欲求が根本的に一番強い欲求であるならば「自殺」がここまで多くなるのはおかしい。自ら命を絶ってしまうというのは、突き詰めると「何らかの所属に失敗した末路」とも言えます。

そんな結末は何としても避けたい。

そのためにも原理を知っておくのはこれからの子どもたちのためにも必要なことと言えるでしょう。

作戦その①~賞賛を求める~


子どもたちも家族、学校、友だち関係などで何とかそのコミュニティに『所属』をしようと努力をします。その『所属』のための行動はライフスタイルにより様々です。

それが健全なものであれば良いですが、自分の取った『所属』のための行動が上手くいかなかった場合、所属のため、自分の存在を認知してもらうために『問題行動』に移っていきます。

この『問題行動』は目的がかなわないと段々とエスカレートしていき、その第1段階目が『賞賛を求める』になります。

この『賞賛を求める』という行為は、例えば子どもが良い行いをして先生などから認められようとし、勉強を一生懸命したり、積極的にクラスの仕事をすることで「先生や親のお気に入り」としてそのクラスや家庭の中で自分の居場所を確保しようとする行為です。

これだけ聞くと、「いい子だしむしろ優等生なんじゃないの?これのどこがいけない行為なの?」という声が聞こえてきそうですね。次項で詳しくお伝えいたします。

|なぜ『賞賛を求める』が良くないのか


この1つ目の問題行動の不健全な点は「動機」なのです。

例えば友だちに思いやりを持つ、他人のお手伝いをする、勉強をするなどの行為が親や先生からの「承認」、つまり褒められる、認められることを目的として行動している場合、あまり健全とは言えないということです。

子どもが承認されることを目的として行動していると、親や先生からその努力を認められなかったり、褒めてもらえなかったりすると、自分が今までした行為はすべて無駄と感じてしまいます。「これで認めてもらえないならする必要はない。」こういった思考パターンが出てきやすい。
「学習」や「協力」、「思いやり」というのは、入り口は「承認」でも良いかもしれませんが、続けるモチベーションは「自発的な動機」であるほうが健全です。

それに、認めてもらうのを常に親や先生、他人に求め続ける姿勢が続くと、自分のしたことに自信が持てなくなる傾向が強くなります。

この傾向は大人になっても多く見られます。
何でも「これでいいか、どう思うか」を他人に聞いてきて自分では決められない性格。
自分で決めるようなことまでも人に聞いて自分では判断しない。子どもの頃の習慣というのは、大人になっても本人が気づくまでは 続いていきます。

そしてこれには「競争原理」もはらんでいます。

承認の陰にはいつも他人の存在があります。
他人に比べて自分が優れた行いをすることで、より優位な位置を確保しようとする。「優劣」や「勝ち負け」を意識し、アドラー心理学でいう『縦の関係』を意識した思考でいるということになります。

他人と比べず、自分で思い、自分で判断し、失敗しても次を見る。

他者の承認ではなく、自分の意思で決断し、失敗をも受け入れ、なお『人との協力』を求め進んでいく姿勢を子どもが学んだのなら、子どものその先の人生においても、きっと自分自身が自分のことをしっかりサポートし、自立した子どもになることでしょう。

|『賞賛を求める』行動への対処法


前述しましたが、『賞賛を求める』動機には承認欲求があり、その背景には「競争」があります。

この「競争」によって得られるものは自分の利益だけです。
そうではなく他人と協力し、全体への貢献を他人の承認を必要とすることなく自ら求めていってもらいたい。

そのためには「褒めて」に対して褒めてはいけません。

これがアドラー心理学の面白い点でもあります。
よく「しかってはいけない」はよく聞きますが、「褒めてはいけない」まで言及しているのはアドラー心理学の特色ともいえるかもしれません。

賞賛を求めてくる子どもは大抵に「結果」に対して賞賛を求めてきます。

例えば「テストで90点取った!」に対しては、アドラー心理学では「良い成績だね」とはあまり答えたくありません。
そうではなく、例えば「すごい努力したんだね」と声をかけてあげたいです。
これは「結果」ではなく「過程」を重視した対処法です。

「結果」に対して褒めてほしいのは、裏に必ず他人との優劣や勝ち負けが潜んでいます。
それに「結果」ばかり褒めていたら、「悪い結果」の時、子どもは自分には価値がないと思ってしまいます。
「過程」に注目して声をかければ、本人は違う目的があっても優劣や勝ち負けではなく、努力が大切なのだと思いなおしていきます。

勉強以外の家事や掃除などで賞賛を求めてきたら「すごい」ではなく「ありがとう」と言いたいです。
しかし、なるだけ前倒し主義でしっかり普段から子どもをみて、全体への貢献を自ら率先して行っているところを発見したら即座に声をかけてあげるのが私は良いと思います。

「報告」や「結果」ではなく、普段の生活の中にある子どもたちの何気ない瞬間で発見する、協力・貢献しようとしている姿勢に感謝を伝えることが何よりの対処法だと考えます。

|まとめ


いかがでしたでしょうか。
今回のテーマでは『褒めてはいけない』というのがキーポイントかもしれません。
優劣や勝ち負けではなく、他人との協力、全体への貢献している姿を、普段から見守り、積極的に声をかけていけたら素敵ですね。

次回は「問題行動の5つの作戦その②」を書いていきたいと思います。

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